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WORKS事例紹介

ビルの個性を再発見し「水」に寄り添う街を具現化
シーバンスN館

SEAVANCE N

街に根付くストーリーを伝え
水の広がりを感じるオフィスビルの一角

人の行き交う芝浦周辺のビジネス街と、街に根付いた緑地や運河を臨む立地にあるNTT都市開発のオフィスビル「シーバンスN館」。

エントランスエリアの有効活用と、ビルならではの個性の具象化を目指し、無機質なマテリアルで構成されていた二箇所のスペースが、緑が茂り木漏れ日が心地よい空間へとリニューアル。

運河という街を象徴する水の風景が根づいた土地柄から着想を得て、コンセプトを「KITEN(起点)」に設定。ひとつの水の波紋が何層にも連なり大きな水の流れを生み出すように、この場所をきっかけとして人が集まり、それぞれが自分の過ごし方を見つけていく。そうしてこの場所を起点に次のアクションやアイデアにつながっていく...。そんな想いを表現した空間が誕生しました。

DATA
弊社の業務内容:コンセプト提案、 内装デザイン設計、造作什器デザイン設計、植栽計画、施工、植栽メンテナンス

ビジネス街に面した人通りの多いシティサイドのエントランス。シンボリックなエントランスをつくるために、人の身長を優に超える大きなシンボルツリーを中心とした巨大なプランターを造作。水の不規則なゆらぎを模した有機的な曲線のプランターやカーペットは、まるで押し寄せては引いていく波のよう。

ビルに入るとまず正面で出迎えるシンボルツリー周辺一帯の植栽帯と、写真右奥のビルの利用者が自由に過ごせるラウンジスペース、そしてその二箇所をつなぐ浮島のような存在の植栽帯。空間全景を通して、かつてこの地域で見られた水辺の風景を表現しました。

 

 

朝の通勤時間には、エレベーター待ちの行列ができるほど忙しない日々の通り道。そこに植物の彩りや、成長とともに変化する自然の表情を一年を通して体感いただくことで、日常に豊かさや気づきが生まれていきます。この場所を起点として、気持ちのスイッチングを促したり、待ち合わせなどの場所としても愛着を持って使っていただけるよう、象徴的で大胆なシンボルツリーを植えました。

シンボルツリーは愛知県豊橋の温暖な地でのびのびと育った、爽やかなベンジャミン。高さ5メートル級の貴重な高木を納品しました。同じ土地で育った、高さと樹形の異なる2本のベンジャミンを寄せ植えることで、広い空間にも負けないインパクトのあるコーディネートを実現しています。

 

リニューアル以前より取り付けられていた壁面のアートタイルは生かす形で検討し、明るく爽やかなカラーリングと曇り具合がさまざまなマテリアルを複数組み合わせて鏡面仕上げに。植物、周辺の景色、外光や空の表情までをも取り込み、室内外が溶け合い生まれる一体感の創出を意図しました。

 

有機的な曲線で造作したプランターは、金属が化学反応を起こしたような独特の風合いを表現。

そこに生い茂る植物は、この土地のかつての風景に思いを馳せ、運河や川べりの石の隙間から生えている植物をイメージしてコーディネート。地域に根づく潜在自然植生種もバランスよく混植しています。枝垂れる枝の合わせ方にもこだわり、エントランスの自然な風景を表現しました。

 

 

ビルのすぐ裏を流れる運河に面したベイサイドのエントランス。かつては江戸湾(東京湾)が広がり、今でも運河が残る街。そんな土地に根付いた風景を、このビルの特徴として再認識するように、浮島のような形で有機的な独特のラインを描くベンチが存在します。什器の中心では絶えず水が湧き上がってはゆらぎ落ち、心地よい水音が静まり返ったエントランス一帯に響き渡ります。

その周りをベンチやカーペットの波が何層にもわかれて打ち寄せる様子は、人の輪やアイデアの輪が波紋のように幾重にも連なり広がっていくという思いが込められています。

 

高さ2.5メートルほどの、曲がり樹形が特徴的なガジュマルは、太く力強い幹から枝分かれし、密に葉が茂ります。什器と水に呼応する生命力ある樹形で、重厚感とアート性の強い一本をコーディネートしました。

ベイサイド側のエントランスは、主にVIP向けの車寄せの場となるため、短い待ち時間の中でも鮮明な印象づけを促し、気軽に腰掛け水音に耳を傾けるひとときを演出します。

 

水のゆらぎとともに存在感を放つ石。石の要素が加わることで、水がテーマの空間の表情もより豊かに。神奈川県の真鶴半島で採掘される上質な本小松石を用いて、石本来の姿、自然な割れ目の美しさを見せます。

現地真鶴を訪れ実物を見ながら選定した本小松石の独特な風合い、経年変化する色味などを、ベンチに座ってふと視線を落としたときに体感いただけるよう、形状や向きにこだわり一つ一つ配置。什器とのバランス、木と石の気勢を見極め、互いの関係性を支え合うようにしつらえています。

 

シティサイドのエントランスと隣り合うラウンジスペース。同じフロアの隣接した場所にありながらも、エントランスの爽やかな印象に対して、温もりや居心地を重視した空間デザインに。波にもまれて角がとれていったような丸みを帯びたプランターベンチの形状は統一感を持たせながらも、温かみのある照明計画で差別化を図りました。

また屋外のランドスケープデザインで見られる植栽の演出方法を用いて、アッパーライトを効果的に使用し葉影を天井に映す演出を施しています。室内でも外で過ごしているような、自然に包まれる心地よさを体感いただけるよう工夫しました。

 

ラウンジ中央に連なる既存の照明の柱は、ベンチの一部として残し鏡面仕上げに。また奥へ誘因する仕掛けとして、一番奥の照明にはある仕掛けが。

 

既存の照明に改造を加え、水面に泡が生じてははじける様子を天井に照らし出す「Utakata Lamp(泡沫ランプ)」を作りました。空間のコンセプトである「KITEN(起点)」に通づる、灯台のようにアイキャッチになり、ここを目掛けて歩みを進める象徴的な存在になるようデザイン。

 

Utakata Lampの周辺にも水音が響きます。角のとれた丸い小石や、川辺をイメージした下草が、落ち着いた水辺の風景を描きます。視覚にも、聴覚にも、心地よく作用し、かつてこの土地で見られた水辺の風景を思い起こさせるよう。

 

あえて透け感がある樹木を織り交ぜて、一つ一つの枝葉の影が美しく落とされるようコーディネート。ここでも真鶴の本小松石がアクセントに。

 

ベンチの座面も自然の風合いを大切にし、温かみのある左官仕上げに。ベースの土の種類によって仕上がりの色合いが変わる左官材を採用しました。

実はベイサイド側のエントランスのベンチも同じ左官仕上げですが、土の種類が異なるため風合いや印象も変わってきます。こうした土本来が持つ特徴を最大限に活かすことにこだわりました。

 

2名掛け、4名掛け、6名掛けの3パターンで構成された、用途や人数によって使い分けができるテーブル&ベンチ。壁面の水面を表現したパネルやブラケットライトがアクセントになり、クールなトーンを印象づけます。また植物が自然なパーテーションの役割を担い、視線をほどよく遮り周囲との関係を曖昧に分けています。

 

 

テーブル天板に映し出される、ゆらぐ光の表情。水面パネル、木、光が交差し合い、独特な表情を生み出しています。

 

既存のテーブルを生かしたロングハイテーブル。既存のテーブルにプランターを増設し、集中して作業する時間を植物が優しく包み込んでくれるデスクへとアップデートしました。ここではあえて周辺の植物とは異なる特徴を持つフィカス・アルテシマを植えて、座る席ごとに新しい発見がある遊び心を。

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