COLUMNコラム
GREENING
屋内緑化・室内緑化と壁面緑化とは?種類と工法・枯らさない設計・事例を現場から解説
室内に、庭そのものを立ち上げる(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
はじめまして。parkERsで広報を担当している森です。「室内に緑を入れたいけれど、枯らしてしまわないか心配」。いちばん多いご相談です。壁面緑化のことも含めて、そこを中心にお話しします。
オフィスのエントランスに大きな木を一本。壁一面を緑で覆いたい。マンションの共用部に、腰を下ろしたくなる一角を。そんな計画が持ち上がったとき、決まって出てくる不安があります。
「枯れたらどうするのか」
実はこれは、杞憂ではありません。わたしたち自身、植物を空間に設置したものの、植栽維持管理費の負担から、縮小または撤去されてしまうという場面を見てきました。屋内緑化がうまくいくかどうかは、どんな植物を選ぶかより、その先をどう設計しておくかで決まります。
この記事では、オフィス・商業施設・マンション共用部といった法人の空間を対象に、屋内緑化・室内緑化の基本と、その視野に入りやすく特殊な手法である壁面緑化の種類と選び方、枯らさないための設計と技術、費用を左右する要素までをお伝えします。書き手は、「日常に公園のここちよさを。」をコンセプトに、1,000社以上の法人との取引実績をもつ空間デザインブランド・parkERs(パーカーズ)です。
屋内緑化・室内緑化とは — 意味と対象になる場所
屋内緑化・室内緑化とは、建物の内側に植物を計画的に取り入れ、そこで過ごす人の時間を心地よくする設計手法です。光・水・土・風といった環境条件から逆算して植物の居場所を決め、維持のしくみまで含めて設計しています。床に置く、天井から吊る、そして壁を覆う。手法はいくつもありますが、考え方の軸は共通しています。
わたしたちparkERsは、これを「室内に公園をつくること」と捉えています。公園とは、樹木や草花、土や水といった風景だけでできているのではなく、そこで過ごす人がいてはじめて公園になる。つまり「公園=風景+人」。屋内緑化で問われるのも、単に鉢植えの緑をどれだけ置くかではなく、そこにいる人にどんな時間が生まれるかだと考えています。

鉢を置くのではなく、庭として設計する(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
屋内緑化と室内緑化の違い
結論から言うと、実務ではほぼ同じ意味で使われています。「屋内緑化」は屋外緑化と対になる言い方で、建築や行政の文脈で使われることが多く、「室内緑化」は部屋の中という空間のイメージが強い言葉です。どちらも、建物の内側を植物で豊かにする取り組みを指します。
近い言葉に「インドアグリーン」「観葉植物」がありますが、こちらは植物そのものを指すことが多く、設計の話とは少し距離があります。この記事では、法人の空間づくりとしての屋内緑化・室内緑化を扱います。
もうひとつ、「観葉植物を置くこと」との違いも整理しておきます。鉢を並べることも自然要素の導入ではありますが、わたしたちが行う屋内緑化ではもう一歩踏み込みます。人の動線のどこで緑が視界に入るか、光はどの時間帯にどう差すか、竣工後は誰がどうやって世話をするか、どのように利用者に体験させるか。植物を「飾る」のではなく、空間の一部として「設計する」。parkERsではこれを「Design × Green」と呼び、空間デザイナーとプランツコーディネーターがチームを組んで、図面の段階から植物込みで空間を設計しています。

図面の段階から植物込みで設計する(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
屋内緑化が導入されている場所
対象は、人が過ごす屋内空間のほぼすべてです。
- オフィス — エントランス、執務エリア、リフレッシュスペース、会議室
- 商業施設 — 共用部、休憩スペース、店舗の内装
- マンション — 風除室、エントランスホール、ラウンジなどの共用部、占有部
- 病院・クリニック — 待合、廊下、中庭に面した空間
- ホテル・ラウンジ — ロビー、客室、ラウンジ
最近ご相談が増えているのは、オフィスです。働く人のコンディションや来客への印象に加えて、出社する理由をオフィスの側でつくりたいという文脈から、エントランスや執務エリアに緑を入れたいというご相談が増えています。
用途によって、求められるものは変わります。オフィスなら働く人のコンディションと来客への印象。商業施設なら滞在時間と回遊。マンションなら資産価値と住民の満足度。同じ「室内に緑を入れる」でも、何を目的にするかで植物の量も配置も変わってきます。だからこそ最初に伺うのは、植物の好みではなく「その空間で何に困っているか」です。

用途によって、緑に求められる役割は変わる(トヨタ自動車 次世代BEV開発部門 Genki空間®/parkERs施工事例)
壁面緑化とは — 屋内緑化のなかでも目を引く手法
屋内緑化のなかでも、よくご相談をいただくのが壁面緑化です。床の面積を使わずに緑を増やせるため、敷地や床に余裕のない都市部で選ばれています。
壁面緑化とは、建物の壁面や構造物の立面を植物で覆い、景観・環境・体験の質を高める手法です。単に壁に植物を貼りつけることではありません。どの高さに視線が集まるか、光がどう当たるか、水をどう届けて排水をどこへ逃がすか、給排水がない場合は水をどう循環させるか。そうした条件を設計として解いてはじめて、壁面の緑は長く生きつづけます。

壁一面を地域の風景に変える(新山口駅 南北自由通路/parkERs事例)
屋外の壁面緑化と室内の壁面緑化
大きく分けると、屋外と室内で考えることが変わります。
屋外の壁面緑化は、日射・風雨・温度差にさらされます。その分、植物の選択肢は広く、自然光で育つため照明は不要です。一方で、建物への荷重や防水、落下防止、強風時の安全といった条件を建築側と詰める必要があります。
室内の壁面緑化は、環境が安定している代わりに光が足りません。耐陰性の高い樹種を選び、面全体にしっかりと光が当たるように照明を計画します。水やりの水が床に落ちない納まりや、虫への配慮も求められます。空気が動かない場所では、サーキュレーターで風を通すことも必要になります。この記事で紹介する事例にも、両方のタイプが含まれています。

室内の壁面は、光をどう補うかが設計の起点になる(Snow Peak Tokyo HQ3 オフィス/parkERs施工事例)
屋外空間の設計についてはランドスケープデザインの記事で詳しく紹介しています。
壁面緑化の種類と工法
工法はいくつかの型に整理できます。代表的なものを、発注する側の目線で並べます。
| 工法 | 仕組み | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 登はん型 | つる性植物を壁やワイヤーに這わせる | 屋外。時間をかけて育てられる場合 |
| 下垂型 | 上部のプランターから植物を垂らす | 屋外・屋内。高所の壁面 |
| ユニット型(パネル型) | 植栽基盤のパネルを壁に取り付ける | 短期間で完成形に近づけたい場合。デザインの自由度を高めたい場合 |
| プランター型 | 壁面に沿ってプランターを段状に設置 | 植え替えや管理のしやすさを重視する場合 |
登はん型・下垂型 — 植物の性質を使う
植物自身が伸びる力を使う方法です。初期の設備は比較的シンプルで、時間とともに緑が広がっていきます。ただし完成までに年単位の時間がかかり、思いどおりの密度になるとは限りません。「何年後にこうなっていればいい」と待てる計画に向いています。
登はん型は、ヘデラやツタのようなつる性植物を壁やワイヤーに這わせていく屋外での方式です。下垂型は、逆に上部のプランターから植物を垂らします。どちらも植物の生長に任せる部分が大きいため、剪定や誘引の計画が重要になります。放っておくと窓や設備まで覆ってしまい、建物側に負担がかかることもあります。

植物の生長に任せる部分が大きいほど、剪定と誘引の計画が要る(グリーンハウス/parkERs施工事例)
ユニット型・プランター型 — システムで持たせる
植栽基盤やプランターを壁面に取り付け、設備として緑を保持する方法です。竣工時点から完成形に近い見た目をつくれるのが強みで、オフィスや店舗のように開業日が決まっているプロジェクトでは、こちらが選ばれることが多くなります。その分、灌水の設備と排水の経路(場合によっては循環経路)を設計に組み込む必要があります。
ユニット型は、壁の好きな位置に植物を入れることができるため、デザインの自由度が高く、施工がしやすく期間を読みやすいという利点があります。屋外では、植物をあらかじめ植え込んだパネルを壁に取り付ける方法もあり、施工期間を短くできます。プランター型は、段状に設置したプランターで植物を育てる方式で、植え替えや日常の手入れがしやすいのが特徴です。建物の構造に手を入れられない場合でも、自立するフレームを組んで成立させることがあります。

植栽基盤に植物を保持して、立体的に造形する(GROOVE X オフィスエントランス/parkERs施工事例)
壁面緑化は工法から選ばない
ここがいちばんお伝えしたいところです。相談の場で「ユニット型でお願いします」と工法から入るご依頼をいただくことがありますが、わたしたちは順番を逆にします。
先に決めるのは、その壁で何を起こしたいかです。来客を迎える第一印象をつくりたいのか、執務席からの視線の先を変えたいのか、街に対して開きたいのか。次に、その壁の環境条件を読みます。光がどれだけ届くか、給排水を引けるか、荷重はどこまで許容されるか、人が触れる高さか。
目的と条件が決まると、選べる工法は自然に絞られます。逆に工法から入ると、その壁に合わない方式を無理に成立させることになり、維持の負担として跳ね返ってきます。

目的と条件から、工法と樹種が決まる(Snow Peak Tokyo HQ3 オフィス/parkERs施工事例)
屋内緑化・壁面緑化の事例
ここからは、わたしたちが実際に手がけたプロジェクトを紹介します。室内に庭をつくったもの、壁一面を緑で覆ったもの、水やりを自動化したもの。アプローチはさまざまですが、どれも「その空間でどんな時間が生まれてほしいか」から設計されています。
事例① 箱根植木 本社エントランス — 造園のプロが選んだ室内の庭
創業70年という歴史の中で、日本庭園や商業施設の緑化、文化財庭園の改修などを手がけてきた箱根植木株式会社。造園業界大手の老舗企業から、本社室内緑化のご依頼をいただきました。コンセプトに掲げたのは「源庭」。生命の源である水、多様な生物を育む植物、歳月が造りあげた石をふんだんに用いて、さまざまな現象の源が集まる室内の庭をつくりました。大開口の窓の奥から庭がエントランス内に滲み出すようなイメージで、屋外の雰囲気も感じられるように構成しています。外構にも使われる潜在自然植生の苗木や下草を多用しているのも特徴です。詳しくは箱根植木 本社エントランスの事例ページへ。

外構に使われる潜在自然植生の苗木や下草を、室内に(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
事例② 新山口駅 南北自由通路 — 100m超の垂直庭園
新山口駅ターミナル整備事業の一環として、100m超の南北自由通路にフランス人アーティストPatrick Blanc(パトリック・ブラン)氏監修による「垂直庭園(バーティカルガーデン)」が完成しました。特筆すべきは植物です。山口県内の山に入り、圃場で育成した140種17,000株の自生種のみで構成されています。parkERsは設計や施工の監修に特別協力というかたちで参画し、イベント協力も担当しました。毎日通り過ぎるだけの通路が、季節を感じる風景になる。壁面緑化が建築のスケールに達すると、まちの体験そのものが変わります。詳しくは新山口駅 南北自由通路の事例ページへ。

140種17,000株の自生種だけで構成した壁(新山口駅 南北自由通路/parkERs事例)
地元の大人や子どもたちが普段何気なく見ている山々が、実はこんなに美しい植物でできている。そのことを改めて知っていただけて、地元への愛着や誇りにつながったプロジェクトでした。
事例③ Snow Peak Tokyo HQ3 オフィス — 幅6m超、25種以上の「垂直の森」
明治神宮と代々木公園の豊かな森が眼下に広がる原宿の高層ビル。その最上階にあるオフィスに、自然界の森を遠くから眺めた時の柔らかな稜線をモチーフにした壁面緑化が完成しました。幅6メートルを超える壁面緑化は、明治神宮や代々木公園が俯瞰できる立地を生かし、まるで森へと続いていくようにデザイン。少し離れてみれば森の木々がつくる稜線やその柔らかな樹冠のシルエットのように美しく、近づけばさまざまな植物の表情をより感じられるように多品種25種以上を組み合わせて設計しています。シェフレラだけでも異なる7種類を植え込みました。詳しくはSnow Peak Tokyo HQ3 オフィスの事例ページへ。

遠くから見れば稜線、近づけば一種ずつの表情(Snow Peak Tokyo HQ3 オフィス/parkERs施工事例)
事例④ ライズ株式会社 オフィス — 幅約4mとミラー効果
来客の多いエントランスホールに、幅約4mの壁面緑化を設けたオフィスです。ミラー効果により、無限の奥行を演出しています。全体のコンセプトは「SURF」。入り口の壁面緑化にも海岸をイメージさせる植物を装飾し、打ち合わせエリアも西海岸テイストな家具や照明で演出しました。parkERsの業務内容には壁面緑化システムが含まれており、植栽の見た目だけでなく、それを保持するしくみごと設計しています。壁面緑化は、オフィスの床面積を使わずに緑視率を大きく上げられる、導入しやすい手法のひとつです。詳しくはライズ株式会社 オフィスの事例ページへ。

ミラーの反射で、壁面の緑が奥へと続いて見える(ライズ株式会社 オフィス/parkERs施工事例)
事例⑤ ジオ板橋浮間舟渡 — IMoSで水やりを自動化する
総戸数598戸の新築分譲マンションの共用部に、parkERsが2020年から日本特殊陶業株式会社と共同開発に取り組む「Indoor Park モニタリングシステム」(通称:IMoS/アイモス)を導入した事例です。室内の水やりは、土の渇き具合や照度・空調などを踏まえた判断が必要で、知識と経験が求められる作業でした。IMoSの自動潅水機能により、各プランターごとに水位と乾燥時間を設定することで、適切なタイミングでの水やりが実施され、根腐れや水切れのリスクを軽減できます。詳しくはジオ板橋浮間舟渡の事例ページへ。

共用部の緑を、仕組みで維持する(ジオ板橋浮間舟渡/parkERs施工事例)
事例⑥ CoSTUME NATIONAL WALL Fukuoka — 灌水システムから設計監修
CoSTUME NATIONAL WALLの2号店です。1号店にあたるCoSTUME NATIONAL Aoyama Complexも、parkERsが手がけています。壁面のデザイン監修は、植物学者でアーティストのPatrick Blanc氏の作品。熱帯植物を多く使用することで、普段見慣れない景色が広がっています。parkERsは設計に加えて、潅水システム等の施工と植栽施工を担当しました。壁面緑化で最も重要なのは、実は水をどう届けるかです。見た目のデザインと同じテーブルで灌水を設計できるかどうかが、数年後の姿を分けます。詳しくはCoSTUME NATIONAL WALL Fukuokaの事例ページへ。

熱帯植物が壁一面を覆い、見慣れない景色をつくる(CoSTUME NATIONAL WALL Fukuoka/parkERs施工事例)
事例⑦ JT本社ワークプレイス「ときの森」 — 灌水計画から設計する
虎ノ門エリアの高層タワー30階に竣工した、JT(日本たばこ産業株式会社)のオフィスです。「事業を支える自然由来の原材料に感謝し、環境を大切にしていきたい」と森林保全活動を進める施主さまの想いを受け、全国9ヶ所にある「JTの森」(※2022年9月時点)に自生する樹木の苗木を用いた空間づくりをご提案しました。全長約25メートルの窓辺のベンチに、9つの森それぞれの樹種を混植。parkERsの業務内容には灌水計画・施工が含まれており、水をどう届けるかを設計段階から組み込んでいます。詳しくはJT本社ワークプレイス「ときの森」の事例ページへ。

水の届け方まで設計に含める(JT本社ワークプレイス「ときの森」/parkERs施工事例)
造園のプロである箱根植木さまから室内緑化のご依頼をいただいたときは、社内でも背筋が伸びました。屋外の植物に詳しい方ほど、室内の難しさをご存じなんですよね。
床置き、吊り、壁面。手法は違っても、どの事例も「光が届くか」「水をどう届けるか」「誰が維持するか」を設計で解いています。次章では、その共通する考え方を整理します。
このほかの事例はparkERsの施工事例一覧からご覧いただけます。
「置いたら枯れた」の正体 — 屋内緑化・壁面緑化がうまくいかない理由
ここからが本題です。屋内緑化の相談で最も多いのが「前に植物を入れたけれど枯らしてしまった」という声です。原因は植物の種類ではなく、ほとんどの場合、設計の順番にあります。
屋内緑化は光から決める
室内緑化の成否は、置きたい場所ではなく「光の届く場所」から考えられるかどうかで決まります。窓からの距離、方位、室内照明の照度によって、健やかに育つ植物は変わります。窓際など強い太陽光が差し込む明るい場所であれば選択できる樹種の幅が広がりますが、基本的に室内は植物にとって光量が足りない環境です。
光が足りない場所には、照明を計画に組み込みます。「ここに緑がほしい」から始めるのではなく、「どこに光が届くか」を先に把握し、そこに人の居場所と緑の居場所を重ねていく。この順番を守るだけで、失敗の多くは防げます。
照度は場所によって驚くほど違います。同じフロアでも、窓際とフロア中央、北向きと南向きでは条件が変わります。図面上では同じ「室内」でも、植物にとっては別の環境です。設計の初期には実際に現地で光の入り方を確かめ、時間帯による変化まで見ておきます。

窓からの距離と方位で、選べる樹種が変わる(パーク・コーポレーション旧本社/parkERs施工事例)
屋内緑化の水やりは、担当者の努力ではなく設計の問題
次に多いのが水です。室内の水やりは、土の渇き具合や照度・空調などを踏まえた判断が必要で、知識と経験が求められます。ところが実際の現場では、総務や管理の担当者が本来の業務のかたわらで水やりを担うことになりがちです。忙しい時期に忘れられ、気づいたときには手遅れ、というのはよくある話です。
だからわたしたちは、水を「頑張って続けること」ではなく「仕組みで解くこと」と考えます。設計段階で給排水や電源の位置まで計画に入れておくと、その後のメンテナンスの手間とコストは大きく変わります。JT本社ワークプレイスのように、灌水計画そのものを設計の一部として組み込むこともあります。

水やりを人の努力ではなく、仕組みで解く(JT本社ワークプレイス「ときの森」/parkERs施工事例)
壁面緑化は、水の設計がすべて
壁面緑化では、この水の問題がさらに難しくなります。地面に植えた木は土が水を蓄えてくれますが、壁面はそうはいきません。土の量が限られ、重力で水が下へ抜けるため、上部は乾きやすく下部は過湿になりがちです。だから壁面緑化では、灌水の方式と頻度、排水の経路を設計の最初から組み込みます。CoSTUME NATIONAL WALL Fukuokaで潅水システムの施工を担当したのも、ここが要だからです。
排水の計画も同じくらい重要です。与えた水がどこへ抜けるのか。室内なら床への漏れを防ぐ受けの納まりが要りますし、屋外なら壁面を伝う水で建物の仕上げが傷まないかを確認します。水を入れる計画と、出す計画はセットです。

上は乾き、下は過湿になりやすい。だから水の設計が要になる(CoSTUME NATIONAL WALL Fukuoka/parkERs施工事例)
屋内緑化を支える土と風
見落とされがちなのが、土と風です。土は水はけと保水のバランスを決め、根が健康でいられるかを左右します。室内では、山の土をそのまま使うと虫の発生源になることもあります。
そして風通し。植物が元気に育つためには、空気が動いていることも重要な要素です。密閉された空間で空調の風が直接当たり続ける場所は、実は植物にとって過酷な環境になります。光・水・土・風。この4つを環境条件として先に読み、それに合う植物でデザインを組み立てる。それがparkERsの設計の順番です。

光の入り方を読んでから、植物の居場所を決める(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
樹種選定が維持を左右する
もうひとつが樹種です。その壁の光量・温度・風の条件に合わない植物を選ぶと、どれだけ水をやっても弱っていきます。Snow Peak Tokyo HQ3で25種以上を組み合わせ、シェフレラだけでも7種類を使い分けたのは、見た目の豊かさだけが理由ではありません。壁面は場所によって光の当たり方が変わるため、位置ごとに適した植物を配置する必要があります。

壁面の緑を背にして働く(Snow Peak Tokyo HQ3 オフィス/parkERs施工事例)
枯らさないための技術 — IMoSとparkERs soil
設計で解ける部分がある一方、運用でしか解けない部分もあります。parkERsはそこを技術で埋めてきました。
IMoS(Indoor Park モニタリングシステム)— 水やりを自動化する
IMoSは、parkERsが2020年から日本特殊陶業株式会社と共同開発した、IoTを取り入れたBtoB向け室内緑化オートメーション管理システムです。開発の背景にあったのは、植物を空間に設置したものの、植栽維持管理費の負担から縮小または撤去されてしまうケースが多くあったという課題でした。
各種センサーで、プランター内の水位、室内温度・湿度、照度、微風量などをモニタリングし、データをクラウドで管理。自動灌水システムと連動して、遠隔で最適なタイミングでの給水を行います。BtoBにおける室内植栽管理の分野は世界的にも珍しく、過去に特許出願もしています。
導入すると、水やりが自動化されるだけでなく、温度・湿度・照度が数値化されるため、育成評価を定量化できるのも大きな利点です。「なんとなく元気がない」を、データで確かめられるようになります。詳しくはIMoSの紹介ページへ。

センサーとクラウドで、室内の植物を見守る(Indoor Park モニタリングシステム/parkERs)
parkERs soil — 室内で使うための土
もうひとつが土です。parkERs soilは「地球を掘削しない土」をコンセプトに、ココヤシガラやコーヒーの豆かすなど、廃棄予定の資源から製造された持続可能な植物用培養土です。株式会社プロトリーフ開発部の協力を得て、植物を丈夫に長く楽しむための持続可能な素材配合を研究・開発しました。2019年にはリニューアルし、千葉県産の竹炭を低温焼成して配合しています。
室内で使う上での利点がいくつもあります。軽量で高齢者や女性、子供にも扱いやすいこと。山の土を含まないため虫が発生しにくく室内で衛生的であること。可燃ごみとして処分できること。竹炭の配合で通気性や排水性が高まること。そして放置竹林の活用により、植えるほど日本の森や里山が元気になる仕組みにつながっていること。2020年にはグッドデザイン賞を受賞しました。詳しくはparkERs soilの紹介ページへ。

室内で扱うことを前提に開発した土(parkERs soil/2020年グッドデザイン賞受賞)
育てるメンテナンスという考え方
技術で支えた上で、最後は人の手が入ります。わたしたちは植物のメンテナンスを「枯れたら交換する作業」ではなく「育てるメンテナンス」と捉えています。剪定や施肥で植物を育てながら、季節とともに表情が変わっていく空間を保つ。植物が育つ様子は、そこで過ごす人にとっても愛着になります。
植物由来のメンテナンスオイル「Grow Green」など、日々の手入れのための道具も自社で育ててきました。定期メンテナンスでは、水やりだけでなく、葉の状態や新芽の出方から環境が合っているかを読み取り、必要なら配置や樹種を見直します。「あの木、伸びたね」という何気ない会話が生まれたら、その空間はもう風景ではなく、公園になりはじめています。

交換ではなく、育てて保つ(parkERsの植栽メンテナンス)
新しい仕組みは、まず自分たちのオフィスで試すのがparkERs流です。南青山のオフィスは、植物と水とテクノロジーの実験場でもあるんです。
IMoSの画面で水位のグラフを見ていると、植物の調子を数字で知ることができます。「元気がない気がする」が確かめられるのは、現場としてかなり心強いです。
屋内緑化・壁面緑化の効果 — 空間の価値と過ごす人に効く
屋内緑化への投資は、見た目を整えるためだけのものではありません。緑が人の心身に与える影響は、研究でも繰り返し確かめられてきました。自然の要素を取り入れた空間が、働く人のコンディションや空間の印象にどう効くのかは、バイオフィリックデザインの解説記事で研究データとあわせて詳しく紹介しています。
実務の現場で耳にするのは、もう少し手前の変化です。エントランスの印象が変わって来客の反応が変わった。休憩スペースに人が集まるようになった。マンションなら、共用部の緑が住まいを選ぶ理由のひとつになった。空間の価値そのものが動きます。

共用部の緑が、住まいの印象をつくる(イニシア横浜天王町/parkERs施工事例)
屋内緑化・壁面緑化の費用を左右する要素
費用は空間の条件によって幅が大きいため、一概に「坪いくら」「㎡いくら」とは言えませんが、見積もりを左右する主な要素は決まっています。
屋内緑化に共通する要素
- 面積と植栽のボリューム — 広さより、どれだけつくり込むかで変わります
- 給排水・電源などインフラ工事の有無 — 自動灌水を入れるなら、この計画が要ります
- 光環境 — 植物育成用の照明が必要かどうか
- メンテナンス契約の範囲 — 竣工後の維持をどこまで含めるか
壁面緑化で加わる要素
- 工法 — 給排水があるか、明るさはあるか、植物のデザインやサイズはどうかによって工法が変わり、初期の設備費も変わります
- 下地と荷重の条件 — 既存の壁に取り付けられるか、補強が必要か。建物側の工事が発生するかどうか
- 樹種と密度 — 何種類の植物を、どれだけの密度で植え込むか。竣工時に完成形にするかどうか
同じ面積でも、シンボルツリーを一本据える計画と、下草まで敷き込んで庭のようにつくる計画では、費用も維持の手間も変わります。どこまでつくり込むかは、その空間に求める役割から逆算して決めていきます。
屋内緑化で見落とされやすいのが、維持費です。初期費用だけで判断すると、数年後に「維持できないから撤去」という結果になりかねません。IMoSのような自動化の仕組みは、この維持にかかる人の手を減らすために開発されたものです。予算の考え方についてはparkERsのよくある質問でも触れています。

つくり込みの度合いが、費用と風景の両方を左右する(箱根植木 本社エントランス/parkERs施工事例)
見積もりを早く正確にもらうために
相談の前に次の情報が揃っていると、概算までの時間が短くなります。
- 壁の寸法(幅・高さ)と、写真
- 屋内か屋外か。屋内なら窓からの距離と照明の状況
- 給排水を引けるか、電源が近くにあるか
- 壁の下地(コンクリート・ボード・ガラスなど)と、建物側の制約
- 竣工後、誰が維持を担当する想定か
すべてが分からなくても構いません。分かる範囲でお伝えいただければ、不足分は現地で確認します。実際、「この壁を緑にできますか」と写真を1枚お送りいただくところから始まるご相談もあります。
見積もりを比較するときは、同じ範囲で揃えて比べることをおすすめします。設計費・壁面緑化システム・灌水設備・植栽・施工・年間のメンテナンスのうち、どこまでが含まれた金額なのか。ここが各社でずれていると、総額だけを並べても判断を誤ります。

同じ範囲で揃えて比べると、見積もりの違いが見えてくる(成田国際空港 第1サテライト3F 出発ロビーラウンジ/parkERs施工事例)
屋内緑化・壁面緑化の進め方
parkERsでは、次の流れでプロジェクトを進めています。
- 課題抽出 — その空間で何に困っているか、どんな時間をつくりたいかを言葉にする
- コンセプト提案 — 空間の目指す姿を言葉と絵にする
- デザイン提案 — 3Dモデルやパースで完成イメージを共有する
- 設計 — 課題を解決するプランを検討し、デザイン・植栽・設備まで含めて図面化する
- 施工 — 内装と植栽を一体で仕上げる
- 植栽メンテナンス — 「育てるメンテナンス」で空間を育てていく

設計の初期から植物を含めて計画する(parkERs office 2019/parkERs施工事例)
相談は内装の設計が固まる前がおすすめ
屋内緑化で給排水や電源が必要になる場合、内装工事の後では対応が難しくなります。床や壁の仕様が決まる前に相談できると、自動灌水の配管や育成照明の電源を無理なく計画に入れられます。逆に、工事が終わったあとでは、できることが置き型の鉢に限られてしまうこともあります。
すでに完成している空間でも、可動式のプランターや什器一体型の植栽、照明の入れ替えといった方法で印象は大きく変えられます。条件に応じた進め方があるので、まずは現況をお聞かせいただければと思います。サービスの詳細はparkERsのサービス紹介ページにまとめています。

設計の段階から関われると、無理のないプランになる(クラッシィハウス大手町/parkERs施工事例)
屋内緑化・壁面緑化のよくある質問

植物×水×テクノロジーを試す場(point 0 marunouchi/parkERs施工事例)
窓のない部屋でも屋内緑化はできますか?
できます。耐陰性の高い樹種の選定と、植物育成用の照明計画を組み合わせることで、自然光の少ない空間でも植物は育てられます。ただし「どんな植物でも置ける」わけではないので、光の条件を先に確認したうえで、その環境に合う植物を選ぶ順番が重要になります。光がまったく確保できない場所には、自然素材を組み合わせる設計も可能です。
室内緑化の植物が枯れないか心配です。どうすればいいですか?
「枯れる」の多くは、植物の種類ではなく設計と維持の問題です。光の届く場所から植物の居場所を決めること、水やりを人の努力ではなく仕組みで解くこと、そして竣工後のメンテナンス体制を最初から計画に入れておくこと。この3つを押さえておくと、リスクは大きく下がります。parkERsでは自動灌水と連動するIMoSや、室内向けに開発したparkERs soilなど、維持を支える技術を自社で育ててきました。
屋内緑化の水やりは自分たちでやる必要がありますか?
専門スタッフによる定期メンテナンスをご利用いただくのが一般的です。加えて、IMoSを導入いただくと、各プランターごとに水位と乾燥時間を設定して自動で潅水されるため、日常の水やり作業そのものを減らせます。総務や管理のご担当者が本業のかたわらで水やりを抱え込む状態は、長続きしにくいと考えています。
壁面緑化はどのくらいの期間で完成しますか?
工法によって考え方が変わります。植栽基盤のパネルやプランターを用いる方式なら、竣工時点から完成形に近い見た目をつくれます。一方、屋外においてつる性植物を這わせる登はん型は、思いどおりの密度になるまで年単位の時間がかかります。開業日が決まっているプロジェクトでは、この違いが工法選びの決め手になることもあります。
壁面緑化は賃貸のビルでも導入できますか?
条件によります。下地への固定や給排水の引き込みが必要になるため、ビル管理会社やオーナーとの事前確認が欠かせません。原状回復の条件によっては、壁に直接取り付けない自立型の構成や、什器一体型の植栽で近い効果を出す方法もあります。設計者が入ることで、こうした調整も含めて進められます。
マンションの共用部でも屋内緑化はできますか?
できます。ジオ板橋浮間舟渡やイニシア横浜天王町のように、風除室やエントランスホール、ラウンジといった共用部の事例があります。共用部は管理組合での合意形成や、竣工後の維持体制が論点になりやすいので、維持の方法まで含めてご提案するようにしています。
屋外の壁面緑化で気をつけることはありますか?
建物への荷重、防水、落下防止、強風時の安全といった条件を建築側と詰める必要があります。これらは建物の構造に関わるため、設計が固まったあとでは手を入れにくい部分です。計画の早い段階でご相談いただけると、実現できる選択肢が広がります。
フェイクグリーンではだめですか?
視覚的な効果は一定程度期待できますし、光がまったく届かない場所では現実的な選択肢です。ただし、研究で示されてきた効果の多くは、生きた植物や自然光といった本物の自然体験にもとづくものです。人がよく過ごす場所には本物の植物を、手の届かない高所や暗所にはフェイクを、と使い分けるのが現実的だと考えています。
屋外の緑化もあわせて相談できますか?
できます。parkERsは空間デザイナーとプランツコーディネーターがチームを組み、屋内外の両方を手がけています。建物の中と外はひと続きの体験なので、同じチームで設計できると、内と外のつながりを切らさずに計画できます。屋外側の考え方はランドスケープデザインの記事で、屋上の活用については屋上緑化の記事で紹介しています。
まとめ — 室内に、公園のここちよさを
屋内緑化・室内緑化とは、建物の内側に植物を計画的に取り入れ、そこで過ごす人の時間を心地よくする設計手法です。そのなかでも壁面緑化は、床の面積を使わずに大きな緑をつくれる手法として、都市部でとくに選ばれています。
どちらも成否を分けるのは、植物の種類ではありません。光・水・土・風という環境条件から設計できているか。そして維持のしくみまで含めて考えられているか。壁面緑化ならさらに、工法から入らず「その壁で何を起こしたいか」から決められているかどうかです。
「置いたら枯れた」を繰り返さないために、わたしたちは設計で解ける部分は設計で、運用でしか解けない部分は技術で埋めてきました。IMoSもparkERs soilも、その積み重ねから生まれたものです。
わたしたちparkERsは、「日常に公園のここちよさを。」をコンセプトに、空間デザイナーとプランツコーディネーターのチームで、室内外の空間づくりをお手伝いしています。parkERsのフィロソフィーもあわせてご覧ください。オフィスづくり全体の進め方はオフィスデザインの記事にまとめています。

新しい仕組みは、まず自分たちの空間で試す(parkERs office 2019/parkERs施工事例)
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「前に枯らしてしまって」というご相談、本当に多いんです。原因を一緒に振り返るところから始められたらうれしいです。
室内の緑化や壁面緑化をご検討でしたら、空間の条件や過去にうまくいかなかった経験も含めて、まずはお聞かせください。
この記事を書いた人

森 美波(Mori Minami)
株式会社パーク・コーポレーション parkERs(パーカーズ)クリエイティブ室 PR
parkERsは、「日常に公園のここちよさを。」をコンセプトに、オフィスをはじめ室内外に“公園”をつくる空間デザインブランド。2013年、「青山フラワーマーケット」を運営する株式会社パーク・コーポレーションのもとで、Aoyama Flower Marketの姉妹ブランドとして生まれた。
2017年に株式会社パーク・コーポレーションへ入社。空間デザイン事業部「parkERs」で、「公園のここちよさ」を体現する空間づくりの実務に携わる。空間デザインとカフェ部門の広報を務める傍ら、国内外に展開する「青山フラワーマーケット」を含めた全社的なインターナルコミュニケーションの活性化にも従事。現在はparkERsのPR担当として、オウンドメディアの運営やコラム執筆、イベント企画などを通して、「人と植物のここちよい関係性」を広げるために活動している。